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〜〜〜  ビアトリクス・ポターの描いた絵本の舞台を追いかけて(2003年8月) 〜〜〜

3日目(8/21) 湖水地方ショップめぐり
  ホークスヘッド 〜 アンブルサイド 〜 ウィンダミア 〜 ボウネス
  

旅行3日目 午後から1日中降りしきる雨の日 英国人は傘をささない

  • アンブルサイド アーミット・ライブラリー 1955年初版の本との出会い

▼アンブルサイド Ambleside

 ホークスヘッドからアンブルサイドまでは約10キロ、車で約20分ほどでアンブルサイドの町に到着。ここは、町の入口にさしかかるとすべての車は一方通行となるため、目的場所に限らずまずはすべて同じ向きに車を走らせることになる。やがて町の端に到着すると、それぞれ行きたい方向へと再び車を向かわせることができる。

 今まで田舎道を快調に飛ばしていた車も、一方通行を走る車の列につくと、まるでおもちゃの兵隊が行進しているかのごとく、同じスピードで、同じタイミングでブレーキを踏み、歩行者にあわせるかのごとく進むのがいい。私たちを乗せた車も一番後方につき、地図を片手に駐車場を探す。

 幸い駐車場は、ホークスヘッドから来た道より、それほど中心部に入らずに見つかった。到着したのが11時過ぎだったのにもかかわらず、広い駐車場だったためなんとか駐車スペースを確保。ここで一旦あがっていた雨がふたたび降り始める。雨が降ると、途端に周りの景色は、どんよりとした湿気を含んだ空気と、山々に囲まれた素晴らしい眺めであろう町の景色もすべて雨雲がおおい隠してしまう。

 ホークスヘッドで雨の中、一緒に絵本と同じ景色を探してくれた友人が、ここで具合が悪くなり車の中でしばらく休むことになった。旅も3日目で、疲れも出やすい頃だし、雨で気温も下がってしまったためだろう。友人には申し訳ないと思いつつも、私一人でアーミット・ライブラリーに向かい、再び駐車場で落ち合うことになった。

▼アーミット・ライブラリー Armitt Library

  

 (写真左)Armitt Library アーミット・ライブラリーの正面入口
 (写真右)「ピーターラビットの野帳」 アイリーン・ジェイ、メアリー・ノーブル、アン・スチーブンソン・ホップス(著) 塩野米松(訳) 福音館書店(刊) 1999年

 「アーミット・ライブラリー」 公式サイト ↓
 http://armitt.com/armitt_website/

 クリスマス以外は、年中オープン 1F博物館 10時〜17時(最終16時半)
 2F図書館 月〜金曜日 10時〜16時
 入場料: 大人: £2.50 小人: £1.80 ファミリー: £5.60

 私達が駐車した大きな駐車場のすぐ近くにアーミット・ライブラリーがあった。ここは、19世紀に活躍したアーミット三姉妹が収集した蔵書コレクションが基礎となり、会員制の貸し出し図書館として創立された施設で、その後美術品や工芸品なども常時展示する博物館となり、現在1Fが展示品が並ぶ博物館として、2Fは図書室となっている。

 ビアトリクス・ポターは、1913年結婚した後、夫のヒーリスが既にアーミット・ライブラリーの会員であったことから、自らも会員となり、ビアトリクスの父が所有していた蔵書を100冊以上寄付することから始まり、自ら描いたキノコの水彩画、考古学のスケッチ、そのほとんどがこのアーミット・ライブラリーに寄贈された。

 アーミット・ライブラリー創設から、アーミット・ライブラリーとビアトリクス・ポターの関係、またどのようなものが寄贈されたかについてなど、詳しい経緯は「ピーターラビットの野帳」を読むことにより理解できる。

 ビアトリクス・ポターが寄贈したもの(フレデリィック・ウォーン社、ホーン・ブック社からの寄贈分も含む)
 ・父の蔵書 100冊以上
 ・菌類(キノコ、コケ類)を描いた水彩画 300点ほど
 ・顕微鏡で観察した研究
 ・考古学に関するスケッチ、書籍
 ・『ピーターラビットのおはなし』シリーズの初版の挿絵
 ・1929年ピーターラビットのアルマナック(暦)
 ・『Wag-by-Wall(かべかけ時計)』の原稿
 ・自費出版したふたつの作品
 ・『Sister Anne(シスター・アン)』の初版本
 ・『The Fairy Caravan(妖精のキャラバン)』の初版本
 ・その他、様々な資料
 (参照:「ピーターラビットの野帳」)

 これだけでも、アンブルサイドのアーミット・ライブラリーは、ビアトリクス・ポターの物語ファンにとっては見逃せない場所。といって、これらビアトリクス・ポターが寄贈したすべてのものが展示されているというのではなく、菌類のキノコの水彩画が何点かと、考古学のスケッチなどが展示され、その他には、アーミット・ライブラリーの会員や後援者より寄贈された郷土史にまつわる様々な重要な展示物などが、天井高くまで埋め尽くされていた。

 さて、1Fを見終え、2Fの図書館に通じる階段をのぼると、ガラス扉がぴったりと閉まり、12時30分〜13時30分までクローズという看板が掲げてある。「Oh, No!」と思いながらも、時刻は12時少し回ったところで、駐車場で待っている友人に悪いと思いながらも、ここであきらめる訳にいかなかった。

 2Fの図書館は定刻どおりにガラス扉が開けられ、一歩中に進むと見るからに難しそうな専門書だらけだった。一瞬、ここには何もないような気がしたが、念のため係りの女性に「ビアトリクス・ポター関連の書籍はどこにありますか?」と頼りなげな英語で質問すると、最初は怪訝そうに顔をしかめられたが、「ビアトリクス・ポター」ともう一度言うと、「わかった」と案内してくれたのは、先程のガラス扉側にある書棚で、壁一面の書棚と窓との間を指差し、「この辺にある」と教えてくれた。

 そこにあった書籍は、ビアトリクス・ポター関連の一般に出版されたものだったが、既に入手できないものばかりで、それらを手にとって、中身を見ることができるのは魅力だった。

 書棚に陳列されていた書籍
 ・「A History of the Writings of Beatrix Potter」 Leslie Linder 1971
 ・「The House of Warn」 Frederick Warn 1965
 ・「Peter Rabbit & Other Tales Art From the World of Beatrix Potter」 Joyce Irene Whalley 1977
 ・「Beatrix Potter and Hawkshed」 Judy Taylor(ホークスヘッドのポター・ギャラリーにて販売のガイドブック)
 ・「The Journal of Beatrix Potter 1881 to 1897」 Leslie Linder 1966
 ・「The Linder Collection of the works and drawings of Beatrix Potter」 1971
 ・「The ART of Beatrix Potter」  with an Appreciation Anne Carroll Moore 1955
 ・「Beatrix Potter Remembered Her Life in Lakeland」 W.R. Mitchell 1987
 ・雑誌「Antiques」 1996年June号 特集記事:Beatrix Potter Scientific illustrator by Robert McCracken Peck
 ・「Toys From the Tale of Beatrix Poter」 Margaret Hutchings 1973
 ・ビアトリクス・ポター協会が発行している関連書籍&ニュース・レターNo.1〜最新号まで

 もう、タイトルを追うだけで必死な作業で、ペラペラとその中身を見たら、その場からまったく動けないぐらいビアトリクス・ポターの素晴らしい作品の紹介と、解説が掲載されていました。そんな素晴らしい書籍のなかに、吉田新一先生の「ピーターラビットからの手紙」も一緒に並べられていて、なんだかうれしいのと日本語に出会えてホッとした気持ちに。

 もし友人がこの場に一緒だったら、ずっとページをめくり続けていたに違いない。しかし、あまり長く友人を待たせるわけにいかないと、図書館内のテーブルの上にあったビアトリクス・ポター協会の入会案内と、協会が発行しているニュース・レターの最新号をいただき、最後にミュージアム・ショップに立ち寄った。

▼1955年初版の本との出会い

 アーミット・ライブラリーの入場入口に併設されているミュージアム・ショップ。ここには、ポストカードや、アーミット・コレクションの解説本や美術品のピンバッチなどの関連グッズが販売されていた。

 
 (写真) 「The Tale of London Past Beatrix Potter's Archaeological Paintings」 From The Armitt Collection 1990 £1.95

 購入したのは、アーミット・ライブラリーが所有しているビアトリクス・ポターの考古学のスケッチについての解説書。

  

 それから、これは日本の「Beatrix Potter Shop」(埼玉県立こども動物自然公園内)にて購入。
 (写真左)「Beatrix Potter The Unknown Years」 Elizabeth Battrick(著) 1999
 (写真右)「ビアトリクス・ポターの知られざる日々」 エリザベス・パトリック(著) 間崎ルリ子(訳) 2001

 アーミット・ライブラリーで購入したのは、考古学について解説書で、日本で見つけた「Beatrix Potter The Unknown Years」は、アーミット・ライブラリーが所有している菌類、キノコについて、あまり表には出てこないキノコのエピソードなどを綴った解説書で、右側はその翻訳。「ピーターラビットの野帳」とこれら解説書を読めば、ますますビアトリクス・ポターについて詳しくなれる?!

 
 (写真)「The Art of Beatrix Potter」 with an Appreciation Anne Carroll Moore 1955

 ガイドブックも購入したし、駐車場に戻ろうとショップ内をぐるりと見渡したその時、私の瞳のなかに黄色い背表紙が飛び込んできた。「あれ、この背表紙?」と、手前に引き出すと、なんとそれは2Fの図書館で見た同じ書籍がショップ内にもあった。

 まさか、まさかと思いながらも「これは、売り物?」と尋ねると、「そうだ!」と答える。

 おそる、おそる「いくらですか?」と聞くと、

 「ナイン。。。。。ポンド」と答える年配の女性。あまり良く聞き取れない。「ナインポンド?」と聞き返すと、「ナインティポンド」と返ってきた。

 もう心臓がドキドキしっぱなしの数分間だった。頭の中で「ナインティ」という言葉が、「90」という数字に結びつくのに時間がかかり、「ちょっと待ってね」と言って落ち着こうとしたら、その女性はしっかりにぎりしめていた私の手から書籍をもぎとり、表紙の裏表紙に貼ってあった小さなシール(幅1cmほど)を私に示した。そこには、「£90」と確かに書かれていて、それからページを数枚ペラペラとめくり、感情のこもった言い方で「Very Beautiful Book」と賞賛した。

 その途端、もう私の心は決まった!その当時のレートは、1ポンドが約200円。日本円で18000円だったけど、欲しい、ここで買わなければ後悔すると思い購入した。

 駐車場に戻り、再び友人と合流した後も興奮さめやらぬ私は、「ごめん」と遅くなったことを詫びながら、頬は高調し胸は高鳴ったまま「すごいものが手に入った」と、そのふたつの言葉を交互に繰り返し、友人も私がおそくなってしまった理由を理解してくれ、許してもらえたのだった。

アンブルサイド アーミットライブラリー 1955年初版の本との出会い (完)
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旅行3日目 午後から1日中降りしきる雨の日 英国人は傘をささない

  • ブリッジ・ハウス 意外や意外!アンブルサイドの大人気観光スポット

▼ブリッジ・ハウス Bridge House

  
 (写真左)アンブルサイドのStock Ghyll(ストック・ギル)ストック川にかかる橋の上に建てられたブリッジ・ハウス
 (写真右)ブリッジ・ハウスの入口正面に、ナショナル・トラストのロゴマークの看板

 *Gill or Ghyll(ギル)とは、峡谷や濁流を伴う場合につけられる「川」を表す地名用語

 駐車場から、アンブルサイドの中心部へ向かって歩き始めるとすぐ、ストック川の橋の中央に建つブリッジ・ハウスの姿が見えてくる。橋の欄干と欄干の間にドンとのっけたかのように建てられている姿に、「本当に橋の上にあるんだ」と、メルヘンの世界に紛れ込んだかのような、思わずまぶたをこすって見上げては、感心しきり。周囲にいる観光客もきっと同じ気持ちなんだろう。しきりにカメラを構えて、町の大人気観光スポットのようになっていた。

 ブリッジ・ハウスは、17世紀に建てられた2階建ての家で、何故このような場所に建てられたかというと、家主が川の上にあるため税金を納めなくて良いのではという考えに基づき建てられたとされる。このような場所に建てれば、本当に税金を納めなくてよいのかどうかはともかく、この17世紀のドライ・ストーンの壁と、スレートの屋根の建物は、湖水地方の景観に非常にマッチして美しい。

 ビアトリクス・ポターは、このような歴史的価値のある建物は、保有して後世に保存しながら残すべきという考えを持っていたため、ナショナル・トラストにアドバイスした結果、このブリッジ・ハウスはナショナル・トラストが所有し、現在はナショナル・トラストのインフォメーション・センターとして、活動の案内やオリジナル・グッズの販売をおこなっている。ブリッジ・ハウス内は、大人が3名も立てば満杯になるほどの狭さで、既に先客がいたため、ハウス内に入ることはできなかった。

 ブリッジ・ハウスとビアトリクス・ポターの関係の参照: 「ピーターラビットの絵本」の作者から学ぶこと 吉田新一(著)

▼Lunch

 ランチは、ブリッジ・ハウス近くの「The Glass House Restaurant」にて。

 
 (写真) 「The Glass House Restaurant」 ガラス工房のギャラリーになっていたようで、同じ建物内のレストランにて。

  
 (写真左) 私がオーダーしたのは、スープとコーヒー £7
 (写真右) 友人がオーダーしたのは、スイーツ

 時間がすっかり遅くなってしまったけれど、ランチは軽めにスープのみ。しかし、スープにはパンが必ず付いてくるので、これだけでも充分たりてしまう。友人のスイーツは、見た目こってりだったけれど、意外に食べれると。もしかしてそれは甘さが麻痺し始めた証拠?!

 3日目の予定は、午前中だけでエスウェイト湖、ホークスヘッド、アンブルサイドと。午後からも訪れる場所があったが、既に興奮する出来事があったため、疲労がピークに。しかし、とってもゆったりしたレストランで、ゆっくりランチができたため、リフレッシュすることができ、ショッピング・ツアー?へ出発!というのも。。。

 
ブリッジハウス 意外や意外!アンブルサイドの大人気観光スポット (完)
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ラピータの部屋コンテンツ 英国旅行記2003年版 2009.5.28 ラピータ著