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〜〜〜  ビアトリクス・ポターの描いた絵本の舞台を追いかけて(2003年8月) 〜〜〜

2日目(8/20) 湖水地方   ヒルトップ、ニアソーリー
  

旅行2日目 車で湖水地方に移動

  • ニアソーリー散策 絵本の舞台を追いかけて その1〜

▼ニアソーリー散策開始
 
 
 ニアソーリーといえば、まずは「ヒルトップ」の標識。ホークスヘッド方面から来た場合は道路左側に、フェリー乗り場から来た場合は道路右側にこの看板が見える。この標識が見えたら、標識の指し示す方向に「ヒルトップ」がひっそりと建っている。

 ニアソーリーは、ヒルトップだけでなく村全体の景色が絵本の舞台として登場する。ヒルトップのお屋敷とガーデン、そしてショップのグッズを堪能した後は、ヒルトップ周辺を散策しよう。

 この標識のある目の前の牧草地も、物語の舞台となる。

  
 
 (挿絵)『パイがふたつあったおはなし』より
      ビアトリクス・ポター(著) いしいももこ(訳) 福音館書店(刊)
 
 (写真右)ヒルトップの場所を示す標識ある場所で、ヒルトップとは反対側の牧草地(MEADOW)

 『パイがふたつあったおはなし』では、リビー(こねこのトムのお母さんタビタのいとこ)がバターとミルクを手に持ち自宅に戻る挿絵から物語が始まる。この舞台となったのが、ヒルトップの目の前に広がる牧草地。


●「ヒルトップガーデンに続く木戸」

 「ヒルトップガーデン」に通じる木戸は道路に面した方にあり、ヒルトップの入口から、ホークスヘッド方面に少し行ったところ。絵本の作者ポターも郵便をポストに出したり、近所に出かける際は、きっとこの木戸を使ったでしょう。メインの入口よりもこちらの木戸の方がポストやご近所さんに近いから。

 この木戸は、『こねこのトムのおはなし』に登場。夏の観光シーズンは木が生い茂っているので、石垣の上に腰掛けること(こねこのトム達が)はできないが、絵本の挿絵では石垣の上にトム、ミトン、モペットが腰掛け、石垣の下をあひるのパドルダック一家が通り、やがて湖の方に行ってしまった。

  
 (左の挿絵)  『こねこのトムのおはなし』より
          ビアトリクス・ポター(著) いしいももこ(訳) 福音館書店(刊)

 (写真右)こねこのトム、ミトン、モペットが腰掛けた石垣近くにある木戸。木に隠れて思わずこの木戸を見落としそうになる。ヒルトップガーデンからこの木戸に行くには、ヒルトップガーデンに設置されたトイレ(トイレ内もピーターと仲間たちのディスプレイ)を出た通路の先にある。木戸はクローズされているので、中からも外からも開かない。


●「TOWER BANK ARMS(タワーバンクアームズ)」

「ヒルトップ」のとなりの建物。道路に面した壁に絵本の挿絵にこの建物が登場したことを示すパネルが飾られている。夜はパブを営業し、B&Bとして宿泊することもできる。

  

 
 (挿絵)『あひるのジマイマのおはなし』より
      ビアトリクス・ポター(著) いしいももこ(訳) 福音館書店(刊)

  
 絵本の挿絵に登場したのは、写真左の手前の植木部分(絵本の挿絵では芝生)と、建物。扉の上にある時計や、窓の位置、「TOWER BANK ARMS」と書かれて看板も。現在も絵本の挿絵の通りに保存されています。

 絵本の挿絵では、番犬ケップが近所のフォックス・ハウンド(犬の種類)の子犬を探しに行き、タワーバンクアームズの前で出会う。フォックス・ハウンドというのは、キツネ狩りに使う猟犬。

  
   (挿絵)『あひるのジマイマのおはなし』より
      ビアトリクス・ポター(著) いしいももこ(訳) 福音館書店(刊)

  (写真右)ニアソーリーで出会った散歩中の犬。

 耳が前に垂れている様子や、スラリと長い足、顔の形といい、『あひるのジマイマのおはなし』に登場するイングリッシュ・フォックス・ハウンドではないだろうか?


●「BUCKLE YEAT(バックル・イート)」

 「タワーバンクアームズ」のとなりの建物。昼間はカフェを営業し、B&Bとして宿泊することもできる。

  

 
 (挿絵)『パイがふたつあったおはなし』より
      ビアトリクス・ポター(著) いしいももこ(訳) 福音館書店(刊)

 絵本の挿絵では、リビーからの手紙(一緒にお茶しませんかというお誘い)を読むダッチェスの姿が描かれている。花が咲き乱れる庭に立ち、家に入る前に手紙に目を通すダッチェス。家の中よりも美しい庭を描きたかったからここで手紙を読むことにしたのかしらと想像が広がる。


   
 絵本の挿絵では木戸が描かれていたが、現在は鋼鉄の門扉になっています。ちょうど私が立っていた位置にダッチェスも立っていたと思うのだけど。

   
 (左の挿絵)  『こねこのトムのおはなし』より
          ビアトリクス・ポター(著) いしいももこ(訳) 福音館書店(刊)

 (写真右)あひるのパドルダックさんたちが通った道。後ろに見える建物はバックル・イート
 
 絵本の挿絵では、パドルダックファミリーが歩いていた道。今ではアスファルトに舗装され、車が何度も行き来するので、あひるが通るには危険な道だけど、建物はいつまでも絵本の挿絵の通りに保存されているので、いつまでも絵本の挿絵と同じ景色を楽しむことができる。

  
 (左の挿絵)  『パイがふたつあったおはなし』より
          ビアトリクス・ポター(著) いしいももこ(訳) 福音館書店(刊)

 (写真右)タイガーリリーの花

 『パイがふたつあったおはなし』の舞台となった「バックル・イート」の庭先には、絵本の挿絵にも描かれているタイガーリリーの花がたくさん咲いている。

  

 バックル・イートのお庭はとにかくお花がいっぱい。壁にぶら下げているフラワーバスケットからもお花がこぼれ落ちそう。煙突の上には、あひるのジマイマの風見鳥が揺れていた。


●元郵便局のドア

 この扉は、ヒルトップと反対側にある牧草地の奥にある屋敷のドア。この屋敷は以前ニアソーリーの郵便局で、ビアトリクス・ポターは頻繁に利用していた。現在は「Low Green Gate Cottage」となっている。

  
 (左の挿絵)  『パイがふたつあったおはなし』より
          ビアトリクス・ポター(著) いしいももこ(訳) 福音館書店(刊)

 (写真右)ダッチェスが手紙を読んでいたポーチは「バックル・イート」で、後ろに見える玄関の扉はニアソーリーの元郵便局の扉を絵本の挿絵で描いている。


●曲がり角

 この場所は、ヒルトップからホークスヘッド方面に少し歩いて、アンヴィル・コテージ(手前のスレートの壁の家)の手前の曲がり角付近。作者ポターが絵本の挿絵に描いたニアソーリーの景色の中で、アンヴィル・コテージだけが登場しなかったと解説本などには掲載されている。
 もしかしたら絵本の挿絵に登場していたかもと思わせるような似たような景色を見つけた。

  
 (左の挿絵)  『まちねずみジョニーのおはなし』より
          ビアトリクス・ポター(著) いしいももこ(訳) 福音館書店(刊)

 (写真右)アンヴィル・コテージの壁の側面と、その向こうに見えるのがアンヴィル・コテージの正面に建つ家。ジンジャーピクルスの舞台となった家(写真はホークスヘッド方面から撮影)。

 『まちねずみジョニーのおはなし』の最後に登場する挿絵には、馬車に乗ったまちねずみジョニーを、いなかに住むチミーが見送る挿絵がある。この舞台を捜し求めニアソーリー内をあちこち歩き回っていたが、似たような景色が見つからず、ニアソーリーの景色ではないのかもしれないとあきらめかけていたその時に、友人が見つけてくれた。

 「この景色がその絵本の挿絵によく似ている」って。

 奥に見える建物の屋根の上に付いていたのは風見鳥だとしたら、そして手前の道路が拡張される前はもっと道幅が狭かったとしたら、そう考えると「ここかもしれない」ってじわじわと実感が沸いてきて、こんな目印も何もない実際に舞台として描かれたかどうかもわからない場所にこだわる私も私だし、足を棒にしながらも一緒になって探し出してくれた友人にも感謝。

 もしかしたら絵本の挿絵の舞台ではないかもしれないけれど、果てしなく似ている景色に出会いたかったら、この撮影ポイントに立って、目の前に幌馬車が通過する様子を想像してみてくださいね。

 (屋根の上の風見鶏)


●アンヴィルコテージ(ANVIL COTTAGE)

 ニアソーリーのティーハウス。手作りお菓子とお茶が飲める。
 (「ピーターラビット村のひとり歩き」岩野礼子/著の、第4章お茶屋のモリーに詳しく紹介されている)

   
 (写真左)アンヴィルコテージの玄関。作者ポターが生きていた頃からケーキとお茶が飲めるお店として繁盛していたとか。
 
 (写真右)玄関扉の上には、うさぎとりすのオブジェ


●「ジンジャーとピクルズや」の舞台となった家

  
 (左の挿絵)  『「ジンジャーとピクルズや」のおはなし』より
          ビアトリクス・ポター(著) いしいももこ(訳) 福音館書店(刊)

 (写真右)お話に登場する「ジンジャーとピクルズや」のお店の舞台となった家。残念ながら改装されたので、今はそのような面影を少し残す建物に。


●鍛冶屋横丁

  
 (左の挿絵)  『「ジンジャーとピクルズや」のおはなし』より
          ビアトリクス・ポター(著) いしいももこ(訳) 福音館書店(刊)

 (写真右)鍛冶屋横丁と呼ばれている道は、 『「ジンジャーとピクルズや」のおはなし』で人形の巡査とばったり出くわすところ。思わず足を止めるピクルズ。

 このおはなしの舞台となるのが、鍛冶屋横丁と呼ばれている道。写真左の弧を描く石垣の出っ張った部分辺りにピクルズが立ち、手前に人形と子供が立っている。奥の建物の前、赤い車が停まっている場所に絵本の挿絵では鶏が数羽地面をついばんでいる。
 前回の旅行の際には、うっかりと鍛冶屋横丁を見逃してしまった。注意深く見ていないと鍛冶屋横丁に曲がる角を通り過ぎてしまうぐらい、石垣とその上に生える木々が景色になじんでいる。

 
 (写真)モスエルクルターンに向かう道を背にし、タワーバンクアームズやバックルイートがある道沿い方面に向かう際、左側に曲がる道がある(矢印)左に曲がった先が鍛冶屋横丁。


●モスエクルスターンに向かう道

  
 (左の挿絵)  『こねこのトムのおはなし』より
          ビアトリクス・ポター(著) いしいももこ(訳) 福音館書店(刊)

 (写真右)モスエクルスターンに向かう道。『こねこのトムのおはなし』では、あひるのパドルダックファミリーが、モスエクルスターン方向に歩いて行く。

  
 前回旅した時は、モスエクルスターンに行くゲートの先が立ち入り禁止だったため中に入ることはできなかったが、今回はゲートが開いていたため少し散策することに。舗装されていない道が続き、道の両側になだらかな牧草地が広がる。

  
 牧草地にいた馬が親しげに寄ってきて、石垣の上から頭を出して「にんじんちょーだい」って言っているかのよう。からだは結構大きいのだけれど、つぶらな瞳がとっても可愛い。


●ポスト

 『ピーターラビットのおはなし』好きなら誰もが足を踏み入れたいと思う、ピーターファンにとっての聖地は「ヒルトップ」。あのお屋敷で生まれた数々の物語を、何度も何度も繰り返し読み、挿絵から英国湖水地方の景色を思い浮かべてはあこがれる日々が続く。

 その数々の物語が生まれるきっかけとなったのは、元家庭教師の子供たちに送った絵手紙だった。もちろんその絵手紙を投函したのは、このポストではなく、ビアトリクス・ポターが訪れた先々からだとわかっていても、ニアソーリーにたったひとつしかないこのポストも含まれていないかしらと思うと胸躍るような気持ちになる。

  
 (左の挿絵) 『ピーターラビットのアルマナック』より(アルマナックとは、暦のこと。1929年のみ発売。イラストはすべてポター書き下ろしのオリジナル作品)

 (写真右)ニアソーリーのポスト。ヒルトップからホークスヘッド方面に歩く道沿いにある。

このポストもアルマナックの挿絵の舞台となる。投函口がピーターにはちょっと背が高すぎるようで、思いっきり背伸びしてポストに手紙を投函している様子を、フロプシー、モプシー達がのぞき見る。


●石垣(Hedge)

 英国湖水地方のあちこちで見かけるスレート(屋根がわらに使用される粘板岩)でつくられた石垣。絵本の挿絵にも度々登場する。このスレートの石垣を見ると湖水地方に来たんだってことを実感することができる。

  
 (左の挿絵) 『こねこのトムのおはなし』より
          ビアトリクス・ポター(著) いしいももこ(訳) 福音館書店(刊)

 (写真右)石垣の上に立って、その向こうに屋敷と、モスエルクスターンへ向かうスレートの石垣で囲まれた道がうっすらと見える景色を一生懸命探したが見つからず断念。せめてと石垣の上にピーターを乗せて撮影。

 どこまでも続くスレートの石垣は、湖水地方の景観でなくてはならないもののひとつ。作者ポターが描く物語の挿絵にもよく登場する。

 
 (写真)作者ポターが、ヒーリス氏と結婚し「ヒルトップ」より移り住んだ「カースル・コテージ(Castle Cottage)」。広いお屋敷とよく手入れされた庭が遠目からもよく見える。このカースル・コテージは少し高台にあるため、私が捜し求めた絵本の挿絵の舞台は、このお屋敷内から見える景色かもしれない。こちらは一般に公開されていないため確かめることはできなかった。


●三叉路

 「バックル・イート」のとなりにあるのが「ヒルトップ」の駐車場。駐車場のとなりに「ソーリー・ハウス・カントリー・ホテル」があり、ここでホークスヘッドに向かう道を、エスウェイト湖方面(左)に曲がる。
道なりに10分ほど進むと「三叉路」があり標識が建っている。

 
 (挿絵)『こぶたのピグリン・ブランドのおはなし』より
      ビアトリクス・ポター(著) いしいももこ(訳) 福音館書店(刊)

 『こぶたのピグリン・ブランドのおはなし』では、兄のピグリン・ブランドと、弟のアレクサンダーが、許可書とお弁当を持ちランカシャーの市にでかけます。

  
 この三叉路の標識がある場所は、絵本の挿絵でピグリンと、アレクサンダーが立っていた場所。絵本の舞台の同じ場所で写真を撮ることができ感激。三叉路の標識は現在2箇所のみを指している。


●ジマイマの橋

 三叉路からさらにエスウェイト湖方面に約10分ほど歩いた地点

 
 (挿絵)『ピーターラビットのアルマナック』より(アルマナックとは、暦のことで現在のカレンダー。1929年のみ発売。イラストはすべてポター書き下ろしのオリジナル作品)

 あひるのジマイマが橋の上から、子供達の泳ぎを見つめている
 
  
 ジマイマが子供達を見つめていた橋。草がぼうぼうでよくわからないけれど手前に橋があり、その向こうにかすかに建物が見える。

 
 橋の向こうに見えていた建物。よーく目を凝らしてみてもらうと、この場所がアルマナックの挿絵の舞台になったのではないだろうかというのが、建物の雰囲気やその角度からわかってもらえるはず。


●シープドッグ(牧羊犬)

 ジマイマの橋からニアソーリーへ戻ってくる途中で、シープドッグがご主人様の口笛を聞き分け、右に左に羊を誘導している場面にでくわした。ちょうど午後5時頃だったので羊達が草を食べ終え、小屋に戻る時間なのだろうか。
 それにしても命令ごとに口笛を吹き分けるご主人もすごい。時々口笛を間違えて吹いちゃうことなんてないのだろうか。

  
(写真左)ひとつの動作を終えるとご主人様の口笛を聞き分ける。
(写真右)ジグザグに動きながら羊を一列にして移動させる
 
 一列の長い行列になって移動する羊達


 夕食は、7時からだったので「EesWyke Country House」に戻ることに。ヒルトップをゆっくりと見学し、ピーターグッズもじっくりと吟味した後、ニアソーリーのヒルトップ周辺をたっぷりと散策したら、からだはすっかりと冷え、雲行きも怪しくなってきた。でもまだ日は沈まない。英国の夏の夜はここからが長いのだ。

 ボウネスやウィンダミア駅周辺ではレストランもすぐ近くにたくさんあるので食べる所に困らないが、ニアソーリーは近くのレストランまで行くにも車がないとどこにも行けない。夕食は宿泊先のホテルにお願いするのがいいようだ。

 日本を旅立ってから3日目にしてようやくまともにありつける食事。さてそのお味はいかに。。。

ニアソーリー散策 絵本の舞台を追いかけて その1〜 (完)
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ラピータの部屋コンテンツ 英国旅行記2003年版 2004.11.18 ラピータ著