TOPページINDEXへイベントTOPページ2008年イベント紹介 >さいたま文学館テーマ展「石井桃子とピーターラビット」イベントレポート

さいたま文学館(埼玉県桶川市)
テーマ展「石井桃子とピーターラビット」
〜海外の児童文学を子どもたちへ〜

さいたま文学館 平成20年7月26日〜平成20年9月7日まで
入場料: 大人210円 学生・生徒: 100円 中学生以下、65歳以上は無料

 JR桶川駅より徒歩5分ほどのところにあるさいたま文学館へ、現在開催中のテーマ展「石井桃子とピーターラビット」を鑑賞するために出かけました。

 駅前のショッピングセンターを抜け、ひとつ目の交差点を過ぎるとすぐにガラス張りで半円形のフォルムが美しい瀟洒な建物が目の前に飛び込んできて、その手前の広場には、背の高い木々が歩道の両脇に並び、セミの大合唱のなか、これら木陰がほんのつかの間の涼しさを演出していました。

  
 さいたま文学館手前の広場と、ガラス張りで開放感があり美しいフォルムの建物が、さいたま文学館。

 さて、さいたま文学館

 
 写真は、1Fエントランスホール
 (この写真は、さいたま文学館の特別な許可をいただき撮影をさせていただきました。館内は撮影禁止です。ご了承ください。)


 こちらの1Fエントラスホールより奥に進んだ地下1Fの特別展示室にて、現在(9/7まで)「石井桃子とピーターラビット 〜海外の児童文学を子どもたちへ〜」というテーマ展が開催されています。

 
 写真は、地下1Fの企画展示室。
  (この写真は、さいたま文学館の特別な許可をいただき撮影をさせていただきました。館内は撮影禁止です。ご了承ください。)


 石井桃子さんは、埼玉県浦和区出身で、まず最初に石井桃子さんの生涯について、その偉大なる功績の中心には、海外の児童文学作品の翻訳という仕事があったこと、また「生涯現役」という信念を貫き通され、お亡くなりになる(享年101歳)直前まで愛用されていた品々が展示されていました。

 これら愛用品は、私たちが見てすぐにわかる一般に販売されているマジックやペンでしたが、このような一面にふれることで、石井桃子さんの存在を身近に感じられる瞬間でもありました。また、これら筆記道具を用いて書かれた1枚の直筆の色紙からは、私たちが後世にまで伝えていかなくてはならないメッセージがこめられていました。

 このテーマ展を開催するにあたり、これら展示の趣旨とその内容がまとめられたガイドブック(小冊子)が、インフォメーションにて手渡され、そのガイドブックの出来栄えが素晴らしかったこと、このガイドブックはこのテーマ展に参加しなければもらえないことなども付記させていただきます。

 そして、このテーマ展のタイトルにもありますとおり、「石井桃子とピーターラビット」についての展示へと続きます。

 まずは、『ピーターラビットのおはなし』の作者ビアトリクス・ポターの作品紹介があり、石井桃子さんとピーターラビットの出会いについての紹介がありました。

 大変興味深かったのは、石井桃子さんがビアトリクス・ポターの作品の舞台となった、英国・湖水地方へ旅行された際、現地で撮影された写真や、旅先で書かれたポストカード、またビアトリクス・ポター研究の第一人で、海外児童文学作品の翻訳も多数手がけている吉田新一さんが石井桃子さんのために書かれた、手書きの湖水地方の地図など、これら展示物は、石井桃子さんがビアトリクス・ポター作品に関わっていく、その一面が見られる貴重な資料として、興味深く拝見しました。

 ガイドブックにも書かれていましたが、石井桃子さんをビアトリクス・ポターの作品へと導いた決定的な出会いとして、1冊の本「The Tale of Beatrix Potter」マーガレット・レイン(著)に出会い、ビアトリクス・ポターという人物に興味を抱いたことが、この作品に深く関わるきっかけとなったことなど、初めて知る事実もありました。

 
 「The Tale of Beatrix Potter a Biography」 Margaret Lane(著) 1946年(刊)
 この書籍についての内容は、こちらをご覧ください。 → Click!

 次に、ピーターラビット翻訳への取り組みとして、石井桃子さんがビアトリクス・ポターの作品の翻訳を始めた時期は、ご自身が最もエネルギッシュに活動され、そして翻訳家としても最も脂が乗る時期と重なり、すべてをこの作品の翻訳に注ぎこまれた製作過程をうかがい知ることのできる資料へと続きます。

 ただ単に日本語として訳すのではなく、ビアトリクス・ポターが大切にしたリズム、レイアウト、そのすべてを原作のイメージ通りに伝えようとする石井さんの努力の一端が垣間見れる資料でした。

 石井桃子さんが、ビアトリクス・ポター作品の内、24作品中19作品の翻訳しかおこなわなかった本当の理由も、この展示で明らかになりました。

 さらには、同じ埼玉県内にある大東文化大学、ビアトリクス・ポター資料館(埼玉県・東松山市 埼玉県こども動物自然公園内)より、このテーマ展に合わせてビアトリクス・ポターの資料が展示されています。

 最後に、冒頭に説明した「生涯現役」を遂行するために、晩年の活動は、ご自身が翻訳された内容を、「より読みやすく、よりわかりやすく、効果的な表現になるように(ガイドブックより)」と、それら作業の過程が読み取れるよう工夫をこらした展示がなされていました。

 このテーマ展は、石井桃子さんが生前に協力をしてくださる旨の意思をいただき、実現されたものです。そのため、石井桃子さんの個人資料が多数出展されています。今後、同趣旨で企画された時に、同じように実現可能かどうかわからない貴重な資料が多く存在するという、関係者のこのテーマ展に関する意気込みをお伺いすることもでき、本当にこの場に来ることができよかったという思いでいっぱいになりました。

 みなさまも、ぜひこの機会に「石井桃子とピーターラビット」との深い関わりを、ご自分の目でご覧いただけると、ピーターラビットシリーズの翻訳の難しさ、そしてその思いなどが伝わってくると思います。

 また、これらテーマ展をご覧になられた後は、ぜひ同館2Fにある文学図書室へどうぞ。こちらでは、「まるごと紹介、石井桃子の翻訳作品の世界」と題し、石井桃子さんの翻訳された作品と、雑誌等で紹介された特集記事が組まれたものすべてここで読むことができます。

 2F 文学図書室
    「お仕事をたどって」、「翻訳作品の世界ものがたり」、「えほんコーナー」、「ピーターラビットの絵本シリーズについて」

 名作と呼ばれる絵本、「えほんコーナー」にて石井桃子さんが翻訳された絵本を本棚に並べてあるのを見ると、これも、あれも、それも、すべて石井桃子さんの手による翻訳というのがあらためてわかります。こちらでも、ぜひお子様と一緒にご覧ください。

 最後になりましたが、特別な許可をいただき、今回のテーマ展の様子を撮影させていただくことができましたこと、あらためて御礼いたします。ありがとうございました。

(2008.8.8 レポート 作成: ラピータ ラピータの部屋コンテンツ 写真撮影:PETER GARDEN

関連サイト:

さいたま文学館
大東文化大学 ビアトリクス・ポター資料館
コピーライツアジア株式会社
財団法人 東京子ども図書館

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さきたま新聞<7/15付>
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 ・テーマ展「石井桃子とピーターラビット 海外の児童文学を子どもたちへ」

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