うさぎ飼育期TOP


アイコ物語 保護してから、うちの子になるまで

 ぐぅがお月様へ旅立った2008年10月18日。月命日の18日が明けた翌日、2009年7月19日迷子うさぎを発見しました。

 迷子うさぎを発見する

 捨てられうさぎと、迷子うさぎ、どちらも同じ立場ですが、その言葉に込められる意味はまったく相反するものです。

 捨てられうさぎは、一緒に暮らしていたペットを、自らの意思で遺棄すること。
 一方、迷子うさぎは、一緒に暮らしていたペットを、何らかの理由で迷子にさせてしまうこと。

 動物を捨てることは、犯罪です。動物愛護管理法に定められた法律で罰せられます。迷子の場合、迷子にさせてしまった飼い主と、保護したものが、結びつく場所があります。それは、迷子となった現場付近にある建物、最寄の警察署、もしくは保健所などです。

 もし、一緒に暮らすペットを迷子にさせてしまった場合、どうするでしょうか?真っ先に、行方不明となったペットを探しますよね。そして見当たらなければ、その現場近くの施設や、近隣に住む方々、身近にいる人たちに声をかけたり、警察に連絡をしたりと、飼い主は必死になるはずです。

 そして、保護したものも同じです。飼い主がペットを見失い、どんなにか苦しい思いをして探していらっしゃるだろうかと、容易に想像がつくからこそ、保護した現場にある施設と、警察、保健所、施設を管轄している役場、すべてに連絡をいれました。

 うさぎを探している該当者はいません。

 発見したその日は、3連休のなか日で、私達もお墓参りを済ませた後に立ち寄った場所での出来事だったので、きっと親戚など出向く用事があり、その日は連絡する時間はおろか、探すこともできなかったのだろうと、勝手に解釈しました。休日が明けたらすぐに行動を開始し、保護したうさぎは無事に飼い主さんのもとに無事に帰ることができるはずと、その時は思っていました。

 
 <静岡県小山町 道の駅の駐車場の車の下で見つけたうさぎ>

 うさぎを発見した場所は、国道246号線沿いにある小山町の道の駅です。車を駐車しようとしたその瞬間、4,5台先の車の下に何かいるのを発見。ピンとまっすぐに伸びた耳で、すぐにうさぎと分かりました。

 野良うさぎは、発見した場所に戻してください。

 野良とは、飼い主が存在しないペットたちのことです。野良犬、野良猫、そして野良うさぎという言葉まで定着しつつあるのでしょうか?捨てうさぎは少なくない、むしろ多いがその実態はよく分からないと聞きます。

 捨てられたペットは、原則的に物扱いで、保護した時点で拾得物となります。拾得物は、遺失物法にのっとり、3ヶ月間警察にて保管されます。保管期間満了の後、落とし主が現れなかったら、拾得者の物となります。

 ペットは、警察での保管が困難のため、拾得者が原則的に保管します。もし預かることが出来ない場合は、拾得者及び拾得した現場の施設を管理する者が保管先を探す、それでも無理な場合は警察が引き取った後、保健所におくられます。

 保健所は、取扱規則にのっとり、留置期間満了後、処分されます。保健所の留置期間中に保管先が見つかればまた新たな道も開かれますが、保健所の留置期間は3日間、長くて7日間と定められてるのがほとんどです。

 しかし、これらは犬と猫の場合です。うさぎは、そちらでなんとかできないのなら、元いた場所に戻すというのが原則のようです。うさぎを保管するための準備が整っていないというのが要因でしょう。

 保管先として何をすべきか

 ・保護ポスター作成し、保護した場所付近に掲載
 ・警察署にて、拾得物届け及び保管届けを提出

 うさぎを保護したのは、誰もが利用できる道の駅の駐車場でした。道の駅は、ドライブしている人たちがトイレ休憩がてら、食事をしたり、おみやげも販売所などがある施設で、駐車場以外にも、気分転換に散歩する広場もあり、子連れやペット連れの家族や、トラック運転手なども集まります。

 一日の利用者は、駐車場の台数が100以上ある内、毎週末ほとんど満車状態であることから、数百人は下りません。大勢の方が出入りする施設です。

  
 <保護して3日後にポスターを作製し(左)、掲載をお願いしに道の駅事務局に出向いたところ、既に独自に製作したポスターが掲載されていました>

 うさぎの行動範囲は、それほど広くはありません。ましてや見知らぬ土地、これまでとまったく違う環境では、お腹がすいたら餌を探す程度で、どこか隠れる場所を見つけたら、おびえてほとんど動かずやり過ごすでしょう。

 このように行動範囲を考えれば、保護した場所で迷子になったのは間違いないだろうと確信しましたので、迷子のポスターを掲示するのにふさわしい場所と思いました。それも、一番目立つ出入り口4箇所に掲示していただくことができました。

 但しポスターを掲示するための条件がひとつありました!

 掲示期間は7月末まで!(11日間の掲載)
 理由は、このようなポスター掲示行為が、逆にこの施設に捨てれば、きちんと保護し、飼い主を見つけてくれるという、あってはならないことですがそんな風に解釈する方がいるため、掲載期間は短いですがご了承くださいと。

 施設の方も飼い主さんが探していると思うからこそ、対応してくださったと思うのですが、動物を遺棄するなんて、動物を愛するものとして信じられない行為ですが、これが現実なんです。

 警察署はあくまで事務手続き

 施設でポスターを掲示をお願いした帰りに警察署に立ち寄り、遺失物担当の部署にて、「拾得物届け」「拾得物件保管依頼通知書」の2通の書類を作成しました。

 書類作成に必要なものは、ハンコと身分証明書です。

 書類作成時に、持参した迷子ポスターは多いに役立ちました。かといって、何かアクションをしてくれるのではなく、必要事項が書き込まれた書類に捺印し、問い合わせがあれば対応するというのが、警察の仕事であり、それ以上もそれ以下もありません。「ご苦労様です」というのが別れの挨拶です。

 警察は、人間の命を守る場所であり、同じ命であっても、人間に危害を与えない動物たちは物としての扱い、そこに命は存在しません。

 迷子ペット掲示板の活用

 その他に出来ること!思いついたのは迷子ペット掲示板へ情報を掲載することです。

投稿した迷子ペット掲示板(4つのサイトの内、上2つ)

 ・Pee's Pets Web −迷子ペット公開捜査−  http://planet.cside5.com/ppw/
 保護ペットの「保護しています・見かけました」に掲示

 ・迷い猫.NET/迷子ペットのための掲示板サイト
 中部地域掲示板に迷子うさぎを掲示
 http://www.mayoi-neko.net/

 ・ペットの保険 アニコム 迷子検索サポートマップ
  http://www.anicom-pafe.com/map/

 ・アニマル探偵局 迷子ペット情報サイト
  http://www.rfc.jp/animal/index_str.html

 万が一、飼い主さんの目に留まれば、迷子であればすぐに連絡があるだろう。ポスターの掲示期間のこともあり、連絡は7月末までは祈るような気持ちでした。

 
<保護した当日(7/19)小刻みに体が震え、リラックスしているようにも見えますが、おそらく体を支える力が抜けていたかもしれません。興奮がおさまるまでは、目の前に用意した餌に反応しません。ちょうどその日の午前中に、iPhone(アイフォン)を入手したこともあり、仮名アイコと名づけました。(写真左)
保護した翌日(7/20)見た目は怪我をしている様子などありませんが、体はガリガリで筋肉の発達もみられず、開張肢であることも判明。(写真左)>

 遺棄されたうさぎ

 7月末のポスター掲示期間が終了し、一切どこからも連絡がなかった時点で、遺棄されたのかもしれないと思うようになりました。

 ・転勤、就職、結婚、出産などで環境が変化する
 ・アレルギーなど疾患が見つかる
 ・世話が面倒になる
 ・凶暴で手に負えない
 ・成長期が過ぎ、自分が想像していた姿や性格が違ったから
 など、身勝手な理由たち。。。

 どうしてもこれ以上は一緒に暮らせないという理由はあっても、そこには責任というものがあります。一生の面倒をみるという責任が。しかし、うさぎはアレルギーの原因となる要素があり、うさぎに近づくことで症状がひどくなるなど、お互いがつらい立場ではなんとか改善策を考えなければなりません。

 だからこそ、私の分までこの子を可愛がって欲しいと、必死になって新しい飼い主さんを探すのではないでしょうか?それも責任です。一度は一生の面倒をみると引き取ってきた子なのですから。

 それなのに、24時間いつでも出入りできる駐車場、アイドリングした車も多く、騒がしい場所。そこにポンとうさぎを投げ出し、逃げ出す飼い主。保護したうさぎと暮らし始めて2ヶ月目の突入すると、そんな遣り場のない怒りが強くなりました。

 そんな時、ぐぅの存在が大きかったです。ぐぅも、里親さんより幼稚園か保育所に遺棄されかかったのです。どうしてもこれ以上一緒に暮らせない理由があり、「里親を探したけど不正咬合のうさぎの引き取り手が見つからず、最後の手段としてはそういうことになるかもしれません」と連絡がきました。もちろん我が家で引き取りました。そして我が家でのんびりと兎生を過ごしてくれたぐぅの存在。

 この頃の私はため息ばかりついていました。それは、再び始まったうさぎとの暮らしで戸惑うことばかりだったから。いえ、それだけではありません。遣り場のない怒りがそうさせていたのでしょう。でも、ぐぅが少しずつ打ち消してくれました。保護して3ヶ月目に突入する頃には、すっかりうちの子のようになってきましたから。

 
<ぐぅが我が家にやって1999年8月17日(写真左) ぐぅのお母さんうさぎプロプシーとご対面。ぐぅも我が家に来た当初、体重はわずか1000g。 その後すっかりとモデルうさぎとして活躍してくれ、たくさんの可愛いショットを大切な思い出として残してくれました。享年10歳(写真右)>

 うさぎの荒々しい気性

 再び始まったうさぎとの生活。ちょうど暑中見舞いを出す頃で、ハガキには「次から次へとやらかしてくれて、もう大変」と報告し、友人たちはそんな私のドタバタぶりに笑顔で応えます。「そういう時代もあったなぁ〜」と、懐かしそうに振り返るその姿。友人たちが一緒に暮らすうさぎたちの荒々しい気性を克服し、ご長寿ゾーンに踏み込んでしまってからは、そんなドタバタしていた頃が懐かしくて仕方ないのです。

 ・すぐに興奮し、性格が凶暴になる
 ・発情期によくみられるマウンティング(馬乗りになりカクカクと腰を動かす)という行動が続く
 ・縄張りの主張である印づけ

 うさぎは、成長期から思春期までの期間が短く、生後半年で思春期に入り、子育てが可能な体へと変化すると共に、ホルモンの分泌量が増えていきます。それにより、オス、メスとも、性格は本能が勝り、気性が激しくなります。

 成長期はぐんぐんと成長していく姿に「可愛い」と、目を細めてばかりですが、思春期はそうも言ってられない様々な行動が、目につくようになります。遺棄されるひとつの理由「成長期が過ぎ、自分が想像していた姿や性格が違ったから」というのが、この突然の変貌ぶりに手を焼き、対処できないのです。

 オスのめだった行為は、縄張りを示すためのおしっこ飛ばし、そして馬乗りのような状態でお尻を激しく動かすカクカクなど。

 メスのめだった行為は、オスを誘うために匂いの強烈なちょびしっこを点々と水滴のようにし、オスほど激しくはないもののカクカクもします。またメスは、偽妊娠といって、妊娠していないのに、妊娠したのと同じ(受精したものと判断する)状態になる場合もあります。

 オスもメスも発情行為が始まると、興奮状態が続き、食べることを忘れるほどの激しさをもつ場合もあります。このような時にケージに閉じ込めると、自由な行動を妨げられることを一番嫌がるため、「出せ」とケージの金網ーを前歯で引っ張り、前歯を痛めるケースもあり、またケージ内にあるものを片っ端からひっくり返すなどの行為もみられます。

 このような発情期の行動は、みなうさぎの本能です。うさぎという種族は、子作りをして子孫を増やすことで、種の存続を繁栄させてきました。それゆえの行動を、誰もとめることはできません。うさぎと一緒に暮らすという選択をした以上、避けて通れません。

 なかには、思春期に入っても、まったく興奮せず、発情行為をしないというケースもあります。かと思ったら、成長期にオスとメスを同じケージで育て、思春期になった途端、オスがメスの体の上に馬乗りになり、マウンティングを始め、メスが生後6ヶ月で5匹、生後7ヶ月で6匹、生後8ヶ月で8匹と、次々に子どもが生まれるという、我が家のベンジャミンとプロプシーのケースもあります。

 成長期(生後2ヶ月)のメス(プロプシー、左)とオス(ベンジャミン、右)
         ↓
 成長期(生後3ヶ月) オス(ベンジャミン、左)、メス(プロプシー、右)この頃はいつも寄り添って、毎日「かわいい」の連続でした。
         ↓
 成長期(生後4ヶ月) オス(ベンジャミン、上)が、メス(プロプシー、下)の体へ馬乗りになり、マウンティング行動(激しく腰をカクカクと動かす)が見られるようになる。
この頃から、オス(ベンジャミン)の気性が激しくなり、すぐに興奮し、メス(プロプシー)のお尻を追い掛け回す行動も見られた。毎日が「かわいい」から一転して、「どうしちゃったの?」とオロオロする事が多くなったもこの頃。
        ↓
 
 やがて生まれるベビーたち。

 うさぎの発情期は、オスもメスも年齢と共に行為の頻度が減り、激しさも少しずつおさまっていきます。マウンティング行動は、そのうさぎの性格により習慣化することもありますが、コミュニケーション・ツールのひとつとしてとらえれば、元気度合いがわかるバロメーターになります。

 一緒に暮らしたベンジャミン、プロプシー、そしてその子どもたちから、たくさんの愛をもらったひとりとして、命の尊さ、愛おしさを伝えたい。そして啓発もして欲しい。命を粗末に扱う人たちに向けて。
 
 環境省自然環境局が発行した「動物の遺棄・虐待防止ポスター」
 関連ページ:
 環境省自然環境局 総務課 動物愛護管理室 「動物の愛護と適切な管理」
 http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/index.html

 「ラピータの部屋」今日のひとことブログ内では、動物を保護した当初の慌てぶりや、奮闘ぶりをもっとリアルに書き綴っています。

 ・迷子うさぎ1 2009/7/19 http://rapeter.exblog.jp/11545981/
 ・迷子うさぎ2 2009/7/20 http://rapeter.exblog.jp/11560922/
 ・迷子うさぎ3 2009/7/21 http://rapeter.exblog.jp/11572454/

 人間を嫌いにならずにいてくれてありがとう

 2009年10月23日
 うさぎを保護し、保管届けを警察署に提出してから3ヶ月目が明けたこの日、再び警察署に出向き、拾得物であったうさぎのアイコちゃんが、正式に我が家の家族の一員として認めますよという書類に捺印してきました。

 必要なものは、ハンコと身分証明書。「遺失者はあらわれませんから、本日より拾得者の物となります」。あいかわらず事務手続き、そして物扱い。でも仕方ありません。色々な思いが交錯した3ヶ月間。そんなもやもやした気持ちともお別れの日です。

  

 家に戻って、アイコちゃんに報告しました。「今日から正式にうちの子だよ」って。アイコちゃんは、そんなこと分かってるって顔です。そっとアイコちゃんを腕のなかに抱くと、顔をうずめて、私の手首をペロペロとなめます。

 人間を嫌いにならないでいてくれて、ありがとう。

 アイコちゃんは、再び屋根の下、人間との暮らしが始まりました。おそらく遺棄され、人間不信にも陥ったことでしょう。しかし、ペットとしてのうさぎは、野良うさぎとしては暮らしていけないのです。我が家で、第2の兎生をのんびり過ごしてね。

 そして、アイコ物語は第二幕へと続くのでしょうか?(おわり)

ラピータの部屋「今日のひとこと」では、アイコちゃんの飼育記をお届けしています。
よろしかったらそちらもどうぞ。
 



作成:2009.10.29 ラピータの部屋コンテンツ