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大東文化大学 ビアトリクス・ポター資料館 オープン1周年記念
記念講演「ピーターラビットの仲間たちを追いかけて」
2007年4月1日

開催場所: 埼玉県こども動物自然公園内 森の教室
 大東文化大学ビアトリクス・ポター資料館は、2006年4月2日にオープンしました。オープン1周年を記念して、4月1日から7日までイベントが開催され、1日に開催された1周年記念講演の模様をご紹介します。

  
 (写真左)記念講演の参加者は約70名とか。会場は満席となり熱気に包まれました。
 (写真右)舞台中央には大きなスクリーン。ビアトリクス・ポターの愛した湖水地方の風景が映し出されていました。

 記念講演の題目は「ピーターラビットとその仲間たちを追いかけて」、講演してくださるのは大東文化大学文学部・英米文学科の河野芳英教授です。そして今回の講演にあたり、絵本の朗読するために小林はるかさんがいらしていました。小林はるかさんは、フジテレビ不思議ハッケンのキャスターを勤めていらっしゃるタレントさんです。小林はるかさんは、朗読の勉強も始められ、なんとこの日は記念すべき朗読デビューの記念日となりました。

 さて、まずは記念講演から。講演前のオープニングでは、『ピーターラビットのおはなし』の作者ビアトリクス・ポターが16歳で初めて訪れ、後半の人生をその地で過ごした英国湖水地方の風景と、その水彩画の作品が上映されましたが、講演では河野教授が訪れた英国中西部にあるグロースターの町の風景から始まりました。

 というのも題目に注目!河野教授自身が、「ピーターラビットとその仲間たちを追いかける旅をしてきました」とおっしゃるとおり、『グロースターの仕たて屋』に描かれた仕たて屋ねずみを追いかけて、グロースターの町に降り立つと、絵本に描かれたその景色どおりの建物が、今もそこにあるのです。

 英国に訪れたことのない人たちにとっては、景色を見ても場所がどの辺りなのかが実感として伝わってきません。そこへいきなり目の前のスクリーンの画面が切り替わると、地球が映し出され、日本の成田空港から、矢印のような飛行機に乗りこみ、飛び立つと同時に地球もぐるりと回転して、英国ヒースロー空港へ到着します。さらに地図が表われ、グロースターの町を指し示します。これなら実際にその地に降り立ったそんな雰囲気になるというものです。参加者のみなさんは、スクリーンに向かって身を乗り出し見入ります。

 Google Earthをインストールされている方はぜひこちらをクリックしてください。
 ・House of the Tailor of Gloucester.kml(グロースターにある、グロースターの仕たて屋アトラクション)

 
 大東文化大学文学部・英米文学科 河野芳英教授

 次の物語の主役たちを追いかけて、グロースターの町から北上し、英国湖水地方ニアソーリー村へ。ニアソーリー村は、ゆったりとした静かな小さな町。そんな町の小高い丘の上にヒルトップ農場があり、あひるのジマイマ・パドルダック、ひげのサムエル、アナ・マライア、こねこのトムたちの物語がここで生まれました。

 Google Earthをインストールされている方はぜひこちらをクリックしてください。
 ・ Near Sawrey.kml(ニアソーリー村)

 物語にも描かれているヒルトップ農場のお屋敷は、1周年を迎えたビアトリクス・ポター資料館そのものです。河野教授は、「オリジナルに近づけるよう、ゆくゆくはツタをはわせたい」ともおしゃっていました。

  
 (写真左)ヒルトップ農場 英国湖水地方ニアソーリー村 2001.7.27撮影
 (写真右)大東文化大学ビアトリクス・ポター資料館 埼玉県東松山市 2007.4.1撮影

 講演は、ここで絵本の作者ビアトリクス・ポターについて、その生い立ちと、絵本が生まれるきっかけへと話が進んでいきます。『ピーターラビットのおはなし』が生まれるきっかけとなった絵手紙の説明では、大東文化大学文学部・英米文学科のジョージ・ウォレス助教授による母国イギリス英語による朗読で、語りかけるように読み上げてくださいました。

 素晴らしい朗読に感謝を述べた河野教授、そして「この絵手紙が書かれた場所は、スコットランドのダンケルドにあるイーストウッド荘の一室です」と、再び「ピーターラビットとその仲間たちを追いかけて」の旅へと話は戻ります。スクリーンにイーストウッド荘が映し出され、建物のどの部屋でこの手紙が書かれたのかスライドに矢印が表示されたり、さらに窓ガラス越しに見るその部屋の様子や、アングルを変え次々とスライドがチェンジされ、参加者の多くは凝った作りのスライドにため息がもれるほどでした。

 ここで、ビアトリクス・ポターがどのような動物を作品として描いたのか、さらには本物の動物が登場する映像の鑑賞があり、子供たちは大喜び。きつね、かえる、コリー犬、はりねずみ、あひる、そしてもちろんうさぎと。

 やがて、ビアトリクス・ポターが書いた絵手紙から、絵本『ピーターラビットのおはなし』がフレデリックウォーン社より1902年に出版されることになったそのエピソードが紹介された後、ビアトリクス・ポター資料館に展示されている絵本について簡単な説明がありました。

 1902年10月2日フレデリィック・ウォーン社から出版された絵本『The Tale of Peter Rabbit』は、8000部出版されました。その8000部の内、6000部はこげ茶色と、濃緑色の厚紙装版、残り2000部は緑色と黄色のクロース装版で出版されました。これらは瞬く間に売れ、翌年1903年の末までに50000部が売れたとされています。「ビアトリクス・ポター資料館には、こげ茶色と、濃緑色の厚紙装版の初版と、黄色のクロース装版の3種類は、常に展示されているのでぜひご覧ください」と河野教授。

 そして講演は、小林はるかさんの朗読へと続きます。朗読は『ピーターラビットのおはなし』です。朗読する際に心がけていることは、「こんなにゆっくり読んでいいのかなと思うぐらいのスピードで話す」ということだそうです。

 朗読の途中、「おとうさんは、あそこでじこにあって、マクレガーさんのおくさんに、にくのパイに(『ピーターラビットのおはなし』より ビアトリクス・ポター/著、石井桃子/訳 福音館書店)」と読まれた際、最前列にいた子供が「肉のパイ?」と合いの手が入ったところが、ほほえましかったです。もちろんその子は、びっくりして思わず声が出てしまったのでしょうけれどもね。

 
 『ピーターラビットのおはなし』を朗読される小林はるかさん

 次に、ビアトリクス・ポターの『ピーターラビットのおはなし』以外のその他の絵本の紹介と、それぞれの物語に登場するキャラクターの名前についてふれ、名前をつける際こだわりをもって名付けたのではないかという仮説のもとに、わかりやすく単語をひとつずつ紐解いて説明してくださいました。

 例えば、『りすのナトキンのおはなし』に登場するナトキンは、「Nutkin」です。これは、「Nut(木の実)」と、「Kin(小さいもの)」に分解して、「小さな木の実ちゃん」という意味がその名前にこめられているのではないか、またそれらを裏付けるようにその他のキャラクターの名前も読み解いていくと非常に興味深いという説明でした。本当に興味深いお話で、時間を忘れてその内容に夢中になります。

 また、動物の習性についてのお話では、「レタスの葉を食べると催眠薬のように効き目がある」。そうこれは、『フロプシーのこどもたち』で描かれています。レタスに含まれているラクッコピクリンという成分には、鎮静・催眠の効果があり、それらをビアトリクス・ポターは実際に飼育していた動物たちを観察することで知り、物語に描いているのです。

 再び小林はるかさんによる朗読です。朗読されたのは、『きつねとこうのとり(The Fox and the Stork)』です。きつねのいじわるにコウノトリが仕返しをするというイソップ物語を元にした作品で、1919年に完成しましたが出版されなかった作品です。この作品をビアトリクス・ポターが描いた美しい水彩画の挿絵と共に朗読してくださいました。

 最後に、今年9月に公開予定のビアトリクス・ポターの半生を描いた映画「ミス・ポター」のトレイラー(予告編)の上映と、ビアトリクス・ポター資料館のある埼玉県こども動物自然公園の園内で暮らしてくる動物たちの紹介があり、「種類は違うけれども、ビアトリクス・ポターの作品に出てくる動物もいるので探してください」と。なかでも「きたろう」という名のシロフクロウは、全国でも珍しくその体にさわれることで大人気だそうです。「背中をかいてあげるときたろうが喜ぶよ」ともおしゃっていました。

 講演終了後に、『ピーターラビットのおはなし』よりクイズが15問出題され、1問正解するごとに1ピョンを獲得でき、正解数の上位30名にはピーターラビットのオリジナル携帯ストラップがプレゼントされました。

  
 (写真左)問題を読み上げてくださるのは、こども動物自然公園のおねえさん。
 (写真右)プレゼントされた資料館オリジナル携帯ストラップ

 クイズの答え合わせの際に、河野教授による解説が加わり、それがまた大変興味深かったです。例えば、「設問5 ピーターはマクレガーさんの畑で最初に食べたものは何でですか?」という問いに対して、A.フィッシュ&チップス B.レタス C.さやいんげん、答えはB.のレタスなのですが、「ハネムーンのサンドイッチの具はレタスだけ。lettuce aloneという英語から”私だけにして”という駄洒落です」など。

 クイズがやさしかったか、それとも詳しい人が多かったのか、全問正解の15ピョンだった人が14名、14ピョンだった人が12名、13ピョンだった人たちが残った4つのプレゼントをかけジャンケン大会となりました。

 「ビアトリクス・ポター資料館は1周年を迎えましたが、これから花の季節を迎え、6月には資料館前のガーデンにてバラが咲き、いまとは違う表情が見られます。ぜひまた花の美しい時期にいらしてください」との河野教授の言葉で講演は終了しました。

 その後、ビアトリクス・ポター資料館のある小高い丘を見つめると、ピーターラビットが多くの子供たちの前で手を振り、次から次へと写真撮影に応じている様子が遠くから見てとれました。資料館に近づくにつれ、まだ春先ということもあり、目の前のガーデンの花々は咲いていませんが、これから大地はゆっくりと息づき、やがて緑と花があるふれるガーデンとなることでしょう。

  
 (写真左)ビアトリクス・ポター資料館へと続く階段のバラのアーチ。
       階段下の建物は、ビアトリクス・ポター・ギフトショップ
 (写真右)水仙越しに見るビアトリクス・ポター資料館

 ビアトリクス・ポター資料館の前には、1年前にはなかった記念スタンプがお披露目されていました。

  
 (写真左)インクがかすれたりしないようにしっかりと均等に力をこめて、キュキュキュ!
 (写真右)Anniversary「1」というロゴの入った、記念になるスタンプで、とても素敵です。
       スタンプ用の台紙も本の表紙を模り、リボンまで。

 
 スタンプを押した紙をもってビアトリクス・ポター資料館に入ると、楽しい抽選会が待っています。金のうさぎマークが出たら、資料館点限定マグカップを、銀のうさぎマークがでたら資料館限定クリアファイルをプレゼント。結果は、もちろんハズレ〜です。こういうのに当たった試しがありません。
  
 (写真左)講演会場で全員に配布された「Beatrix Potter Collection 文献目録」
       大東文化大学図書館・英米文学科所蔵2007年3月出版
 (写真右)クイズの参加賞でいただいたオリジナルステッカー

 このほかにも河野教授が連載している「毎日小学生新聞」2007年3月25日号が配られ、紙面の4〜5ページに「ようこそピーターラビットのふるさとへ」の特集記事が掲載されていました。今回の記事は第6回「作者・ポターからの手紙」と題して書かれていました。美しい写真と水彩画も大きく掲載され、もちろんカラー写真で。この記事を目にした子供たちが、ビアトリクス・ポターや絵本に興味を持ち、またファンになってくれたら素晴らしいですね。(「ようこそピーたらビットのふるさとへ」は、毎月連載)

  
 ビアトリクス・ポター・ギフトショップでは、ショップオリジナルメモ帳(写真左)というのが新発売になっていました。ボールペンとメモ帳がセット(写真右)になったものも。

  
 ビアトリクス・ポター・ギフトショップ越しに見る桜(写真左)はほぼ満開状態でした。その桜の木を間近で見ると(写真右)今年は暖冬の影響なのかソメイヨシノの桜の花びらの色が薄いのだとか。

           
 1周年記念のイベント期間中は、資料館が無料開放ということもあり、のべ3900名ほどの来場者があったそうです。来場された多くの方々が、ビアトリクス・ポターがどのような視点で物事を見て、そして考え、さらには生涯をかけてどのようなことを行ってきたかということに触れていただく、このような機会を与えてくださる資料館の存在はとても大きいと私は思います。

 次回は、資料館のガーデンの花が美しく咲き始めた頃に、ピーターラビットとその仲間たちを追いかけて遊びに行きたいと思います。1周年記念イベントを企画してくださった、ビアトリクス・ポター資料館の関係者のみなさん、そして埼玉県こども動物自然公園のスタッフのみなさん、河野教授、ジョージ助教授、小林はるかさん、河野教授のゼミの生徒さんたち、本当にありがとうございました。

(2007.4.19 レポート作成: ラピータ 撮影協力:PETER GARDEN



関連サイト:
埼玉県立こども動物自然公園 http://www.parks.or.jp/sczoo/
大東文化大学 ビアトリクス・ポター資料館 http://www.daito.ac.jp/potter/
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