ラピータの部屋 >ピーターラビット英国湖水地方の旅トップページ2003年目次>美しいエスウェイト湖よ〜&ライノーズ・パス

〜〜〜  ビアトリクス・ポターの描いた絵本の舞台を追いかけて(2003年8月) 〜〜〜

4日目(8/22) 湖水地方 素晴らしい景色
  ライノーズ・パス 〜 グラスミア 〜 ケズウィック
  

旅行4日目 快晴 嵐が過ぎると、緑あざやかな素晴らしい景色が待っていた!

  • 美しいエスウェイト湖よ、また再び会う日までさようなら

▼美しいエスウェイト湖 Esthwait Water

 あこがれの宿に別れを告げる時がやってきた。シャワーの件さえなければ、満点の素晴らしい宿。

 EesWyke Country House 1泊 68ポンド 食事(Breakfast、Dinner)付

 そして、エスウェイト湖。旅行2日目で夢にまでみたあの景色を、晴れ渡った空の下で再び撮影することができた。自分の目に焼き付けると共に、カメラのファインダー越しからも「なんて素晴らしい景色なんだろう」と、感動がこみあげる。

  
  「英国で一番美しい風景・湖水地方」 辻丸純一(写真) 小学館(刊)
  48ページで紹介されている「エスウェイト湖」の写真が私が夢にまで見た景色
  私も同じ場所に立ち、同じような構図で撮影することができ幸せを噛みしめる。「ここに来られて本当に良かった」と。

 この景色に別れを告げるのはつらいけれど、旅物語はまだまだ続く。次はどのような景色が待っているのだろうか?

▼コニストン湖 Coniston Water

  
 (写真左) コニストン湖を北の端より南側に向かって撮影

 (写真右) 英国のガス会社キャラー(Calor)が、毎年主催する「Village of the Year」。1997年にコニストン村がグランプリに輝いたことを示す記念碑。

 エスウェイト湖から、車で西に向かって10分ほどでコニストン湖へ到着。コニストン湖は、湖水地方に多数ある湖のなかで、ウィンダミア湖、アルス湖(Ullswater)に次いで3番目の大きさ(全長8.8 km)。ウィンダミア湖と同様、クルージングやカヌーなどマリンスポーツが楽しめる。

 しかし、今回は通過点だったため、コニストン湖の景色を撮影して楽しんだ後、いよいよライノーズ・パスへ向かって出発。車内では既に行ったことのある友人夫妻が、「一度見たら忘れられない絶景だから」と、期待感を高めてくれる。「細い道でカーブの連続だから、車酔いには気をつけて」と、事前に注意してもらっていたのに。。。

 さて、いかに!?

美しいエスウェイト湖よ、また再び会う日までさようなら (完)
 旅物語目次へ   NEXT↓(ライノーズ・パス Wrynose Pass


△TOP

旅行4日目 快晴 嵐が過ぎると、緑あざやかな素晴らしい景色が待っていた!

  • ライノーズ・パス Wrynose Pass これぞまさしく湖水地方 ここを見ないでどこを見る

▼パス Pass

 湖水地方の地名によく登場する「パス(Pass)」というは、山や谷の間を抜ける狭い通り道、いわゆる「峠」を意味する言葉。

 この後に登場する、ライノーズ・パス(Wrnose Pass)と、その先にあるハードノット・パス(Hardknott Pass)は、コニストン湖よりさらに西側にあるエクスデールに通じる峠道として、かなりの難所と呼べる道。

 パスと名が付く地名ですぐに思いつくのは、ウィンダミアより、アルス湖(Ullswater)に抜ける道は、カークストーン・パス(Kirkstone Pass)。こちらは見晴らしの良い峠道となっている。

 また、ダーウェント湖(Derwent Water)から、湖の南側を通って西側に抜ける道は、ホニスター・パス(Honister Pass)。こちらは2001年の湖水地方1日観光で周遊した際に通った峠道で、「この景色は最高に素晴らしかった」とレポートにも書いたとおり、観光客に人気の峠道となっている。

 (2001年英国旅行記の「ホニスター峠(Honister)」紹介ページは、こちら。)

 「Went to Buttermere by Grange, Honister, and back by Newlands.
  Extraordinary and striking drive, but one to make one thankful to see a field of corn; an awful road.
 (グレインジ村からバターミア湖まで、ニューランズ渓谷を後にしてホニスター峠を進みました。
 非常に衝撃的な道だけど、一面の穀草地帯を眺められることに感謝しつつ、それにしてもひどい道だこと)」


 「The Journal of Beatrix Potter from 1881 to 1897」より
 ビアトリクス・ポターがホニスター峠で受けた印象を、自身の日記(1885/8/25)に書き記している。

 湖水地方の絶景といえば、湖と牧草地と木々が織りなす景観、そしてそれらを見渡すことのできる丘からの眺めがあまりにも有名(英国では見晴らしのよい高台をすべて丘と呼ぶ)。しかし、英国、特にイングランドの地形は、独特の平野が永遠と続く景色。それらが一転して湖水地方にあるような、山が連なり、高低差のある峠道は、「これぞまさしく湖水地方」と呼ぶにふさわしい景色のひとつとして人気が高い。

 その中でもライノーズ・パスは、道路のコンディション、道幅、カーブ、勾配、そのすべてにおいて一度通ったことのあるホニスター・パスとは比較にならないぐらいすごかった。そしてそこに待ち受けている景色も。

▼ライノーズ・パス Wrynose Pass

 コニストン湖から、A593号線を北上したかと思ったら、なんとなくドライバーの勘をたよりに西に進路をとり、道なりに進んでいく。特に道路案内標識があるわけでもなく、森のなかを抜けたと思ったら、川沿いの道を走ったりと、どの辺りを走っているのかまったく検討もつかず、車のウィンドウ越しに流れる景色を見ながら、ヒントとなる標識はないかと目で追ってみる。

 そんなドライブも束の間、道路の左側にスレートの石垣が続く細い道を進んだ先に、突如ライノーズ・パスが目の前に出現した。

  
 (写真左) ライノーズ・パス 点線部分を切り抜いた写真が下の写真

 (写真右) 左の写真の峠道左側は、右側の写真のような谷になっている。道路の端より撮影。このような谷底を目の当たりにしても、道路脇にはガードレールはもちろんのこと、ここからは石垣も見当たらない。小川のように見えるのは、ブラセイ川(River Brathay)が流れ、この先のリトル・ラングデール湖にそそぎこむ。

 
 (写真)峠道の勾配と、道幅の狭さといったら。夏の観光シーズンのため、容赦なく対向車がやってくる。

  
 (写真左) なんとか登りきった先から、後ろを振り返ると、これまでドライブしてきた峠道の全景が見られた。小さなカーブの連続というだけでも大変そうな道を、マニュアル・ミッション車だったため、激しく神経をすり減らしたであろうドライバーである友人のご主人。しかし、この激しさも楽しかったのか、満足そうな笑顔だった。

 (写真右) まったく同じ位置から撮影された写真が、大好きなガイドブックにも掲載されていた。
       「マップルマガジン イギリス’98」エアリアマップ昭文社 1998年(刊) P45
   この写真の説明文は、「優しさと峻厳さを併せ持つ風景がどこまでも続いていく」となっている。

 偶然にも友人も同じガイドブックを持っていて、そしてこのガイドブックにより「ライノーズ・パス」という場所を知り、数年前にドライブしたそうだ。このガイドブックは、ドライブ好きにはたまらない、そんな観光スポットも掲載されている。

▼ハードウィック種の羊 Herdwick Sheep

 コニストン湖の麓から、標高390mのライノーズ・パスのドライブを楽しみながら、車が停められそうな箇所を見つけるたびに車外に出て、高地のうさぎ気分を満喫。峠を登りきると、斜度は緩やかになり、ハードウィック種の羊の姿があちこちに見られるようになる。

  
 (写真左) おや、こんなところに巨大うさぎが。。。

 (写真右) 山肌の斜面にこのような巨石(横1.5mx1mほど)が鎮座している。

  

 こうして見るとのどかな草原に羊たちが寝そべってくつろいでいるように見えるが、ここは寒暖さの激しい高地であり、夏とはいえ、人間は半袖なんてとんでもない、長袖シャツに上着も必要という格好。しかし、ハードウィック種の羊は、英国で飼育される羊の種類の中で最も頑健で、このような高地に適応する種類。

 
 (写真) ハードウィック種の子羊。子羊は、体全体が黒いのが特徴。

▼道路に設置されたスタイル Stile

 
 
 橋の手前で見つけた道幅いっぱいの鉄格子の網は、放牧している羊がこの先に進めないために設置されたもの。羊たちは穴に落ちる危険を回避するため、この先には進まない。道路にスタイルを設置する訳にいかないので、このような工夫がなされている。

 「スタイル(stile)」とは、放牧地などのフットパスの出口に設置されているゲートのこと。実に様々な形がある。『こぶたのロビンソンのおはなし』第3章では、3つの異なったスタイルが描かれている。

▼ダドン川 River Duddon

 車の窓を全開にし、羊たちの姿に見とれていたら、とうとうライノーズ・パスの終点地点、カークリー・ベック橋(Cockley Beck Bridge)に到着した。今までの険しい峠道とはうってかわって、このカークリー・ベック橋から眺める景色のなんて穏やかなこと。

 ダドン川は、ライノーズ・パスと並行して流れる川。そして、ロマン派詩人ウィリアム・ワーズワスが、ダドン川の流れをたどる内容を、ソネット(sonnet 14行からなる詩)に創作したことでも有名。

 橋の近くに農場が1軒あるだけで、川のせせらぎと、羊たちの鳴き声が時折聞こえてくるのみ。こんな素晴らしい景色が待っていてくれようとは。それも晴れ渡った空の下、どこまでも広がる景色は、まるでここまで頑張った分のご褒美をもらえた気分に等しい。

  
 (写真左) カークリー・ベック橋(Cockley Beck Bridge)

 (写真右) 橋から見たダドン川(River Duddon)の景色。川の右側の並行している道は、ライノーズ・パス。

▼三差路 Crossroad

 カークリー・ベック橋を渡った先に、ようやく行き先の地名を示す標識が立っていた。ここで道は3方向に分かれ、それぞれの目的地へと向かっていく。そのどれもが絶景を誇る場所だけに、もう少しその先まで足をのばしたいところだけれど、私達はこの先の予定も考え、もと来た道を引き返すことに。

 
 (写真) 上記の地図の三差路を示す標識

 
 (地図) 「Lake Districrt AZ Visitors' Map」 Grographers' A-Z Map Company Ltd(刊)

 ・ラングデール(Langdales)経由ライノーズ・パス(Wrynose Pass ここまでドライブしてきた道)
 ・エスクデール(Eskdale)経由ハードノット・パス(Hardknott Pass 橋を渡った先の道)
 ・ブロートン(Broughton)経由ダドン・バレー(Duddon Valley ライノーズ・パスの先、橋を渡らずに進む道)
 
 と、なっている。(地図の赤文字でそれぞれの行き先を表示。青文字は橋のある場所)

▼ハードノット・パス Hardknott Pass

 ハードノット・パス(Hardknott Pass)は、ライノーズ・パスの比較にならないぐらいのきつい登り坂が待っている。というのも、先ほどの三差路を案内する標識の先に、ハードノット・パスを走行する車両に注意を促す看板があった。

 
 (写真)感嘆符のマークの下に、勾配30%を示す看板。その下には、「Narrow route severe bends(狭く曲がりくねった険しい道)」と書かれていた。

 ちょうど目の前をツアー客を乗せたミニバスが通過し、看板の示す登り坂にさしかかった途端、ジェットコースターが頂上部に登っていくように、トコトコと進んでいく。きっとバス内もジェットコースターのように盛り上がっていることだろう。

 ミニバスツアーの1日観光コースで、これらライノーズ・パスや、ハードノット・パスを旅するツアーもあるので、例え車がなくても、この絶景を楽しめる。

▼リトル・ラングデール湖 Little Langdale Tarn

 再び、ライノーズ・パスを通ってコニストン湖方面に戻る途中、行く時は気づかなかった景色が目の前に飛び込んできた。

  
 (写真) リトル・ラングデール湖

 『こぶたのピグリン・ブランドのおはなし』で、ピグリンとピグウィグが、はしって、はしって、橋をわたり、「おかのむこうのはるかなくに」にたどりつきます。その地が、リトル・ラングデール湖のあるリトル・ラングデールで、この物語の舞台となった場所。

 「日のひかりはおかのむこうからさしはじめ、おかをくだって、しずかなみどりの谷間の上にふりそそぎました。谷間にはあちこちに、にわやくだものばたけにかこまれた白い小さい家がたっていました。」

 『こぶたのピグリン・ブランドのおはなし』 ビアトリクス・ポター(著) 間崎るり子(訳) 福音館書店(刊)

 ビアトリクス・ポターは、リトル・ラングデールのことを、物語のなかでこのように表現している。ライノーズ・パスから見下ろすリトルラングデールの景色は、物語に描かれたそのものように感じた。

 ライノーズ・パスの旅物語は、ガイドブックの説明にあった通り、険しく厳しいコースの連続ではあったけれど、その先の和やかで穏やかな優しさあふれる景色と、そして高さがあるからこそ見渡せる絶景と。このような素晴らしい景色を楽しむことができ、そして思いがけず『こぶたのピグリン・ブランドのおはなし』の舞台にも出会えた私達。

 これぞまさしく湖水地方、ここに出会えてよかった。

 車酔いなどなんのその、再び戻ってくるまで平気でピンピンしていたのに、コーヒーブレイクでハプニングが。。。その後の旅物語はどうなる?!

ライノーズ・パス Wrynose Pass これぞまさしく湖水地方 ここを見ないでどこを見る (完)
 旅物語目次へ   NEXT→(麓のパプでコーヒーブレイク


△TOP

ラピータの部屋コンテンツ 英国旅行記2003年版 2009.6.18 ラピータ著